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20180805/高校野球の問題を温存する装置としてのサディスティック嗜好。

問題を追及する声は、ピタっと止んでしまったようだ。決して気温が下がったわけでもないのに。

この夏の歴史的な酷暑から「夏の甲子園をこんな殺人的環境下で開催するのか?」という声が一気に高まった。早ければ今大会、無理だとしても来年の大会から、開催日程を変更するという判断には、絶好の機会と思われたのだが。

ここ数日、おびただしい数の「思い出の甲子園名場面」的番組が放映されている。「松坂大輔延長17回250球連投」が、まるで美談のように語られる。その結果、「これが美談なら、今年の酷暑の中で、野球をやらせることなんて、大丈夫だろう?」という考えが広がる。そうして、問題を追及する声が止んでいく。

例えば、試合を朝と夕方に寄せて、12時~15時に試合をしないようにするなど、それほど大変なことなのだろうか? 仮に大変だったとしても、昨今流行りの「アスリート・ファースト」の観点から、最優先的に進められなければならない事項の1つのはずだ。

しかし、そうはならない。もちろんこの問題の本質は、高野連やメディアなどの運営側にあろうが、果たして、我々受け手の側にも、何らかの問題は無いのか?

「酷暑の中、汗だくの球児が奮闘する姿を見るのが好き」――単に「高校野球が好き」ではない、そういうサディスティックな嗜好が、高校野球人気を底辺で支えていると思うのだ。

そして、そういう嗜好に応えるために、メディアの側は「かけがえのない青春」「美しい友情」「ほとばしる汗」のような記号をトッピングして、その嗜好を美化・正当化する。

その嗜好を更に広げて考えると、「年端もない男の子たちが、厳しい環境の中、大人のごむたいな命令に従って、健気に頑張っている姿を見るのが好き」という嗜好が、多くの日本人の心理の中にあるのではないか?

この嗜好は、単に高校野球に閉じた話ではなく、日本経済全体に通底する話である。

体育会系の学生を優先して採用する企業は未だに多い。極論すれば、ブラック企業の中で、ブラックな命令に従って、文句を言わず、健気に頑張る部下と、その部下を重用する上司。

その上司の評価基準は、先の嗜好と通じるものがある。日本経済の発展は、大げさに言えば、そういう部下、そういう上司、そういう嗜好によって支えられてきた。

話が大きくなったが、「酷暑の中、汗だくの球児が奮闘するのを見るのが好き」というサディスティックな嗜好が根強く存在する限り、この問題は、そう簡単には解決されないような気がする。

私自身の話をすると、このサイトの過去記事のように、一時期、かなり熱心に夏の甲子園を観ていた。昨年の夏まで、必ず数試合、生観戦し、『熱闘甲子園』を涙しながら見ていた口である。だから「酷暑の中、汗だくの球児が奮闘する姿」には、麻薬的な魅力があることを、体感的に知っている。

だからこそ、問題の解決のために、まずは、球児の姿を美化しながら、そういう嗜好をいたずらに喚起するムーブメントに与しないこと。そして、この記事や、以下のツイートのようなことを言い続けようと思うのである。



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20180722/『未来のミライ』が切りひらく映画の未来。

※(注)ほんの少しだけネタバレあります。

結論から言うと、私はかなり感動した。私は細田守作品で言えば『おおかみこどもの雨と雪』派だが、今回も『おおかみ~』と同程度の採点を付ける。

「アニメ映画のJポップ化」という流れがあると思う。「Jポップ化」とは、『君の名は。』がRADWIMPSと見事なコラボレーションをしたなどの表面的なことではなく、もう少し意味的な話である。

ここで言う「Jポップ」の代表はMr.Children。大作主義、構成の複雑さ、抑揚のあるメロディ、派手なコード進行など。あれもこれもがてんこもりの幕の内弁当。商品としての優秀性。聴いた後の過剰な満腹感(その意味での「Jポップ」の始祖は、米米CLUB《浪漫飛行》だと思う)。

『君の名は。』もまさに、そういう意味での「Jポップ・アニメ」だったことが、大ヒットの1つの要因としてあると思う。そして細田守作品で言えば、前作の『バケモノの子』も、「Jポップ・アニメ」に照準を絞っていたと思う(主題歌がMr.Childrenだったのはその象徴)。

『おおかみこどもの雨と雪』は、そういう流れから、少し外れていた。そして今回の『未来のミライ』も、『君の名は。』『バケモノの子』のヒットの流れに直接応えず、「Jポップ・アニメ」を回避し、新しいカテゴリーを攻めてきたと思う。そして、私はそれを歓迎したいと思う。

内容は、いくつかのエピソードで構成されていて見やすいし、1時間40分と上映時間も非常に短い。この年齢になってくると、アニメ以外も含む、大作主義映画には胃もたれをする。色んな意味で見やすいのはとても嬉しい。

長身で華奢で利発な短髪女子が出てくるとか、その子が空を飛ぶとか、「タイムリープ」するとか、有名芸能人が声優(今回は成功とは言えない)をするあたりの、「Jポップ・アニメ」の定石を踏みつつも、やろうとしていることの本質は、とても新しいことではないだろうか。

ただ、この映画の評判を見聞きすると、そういう「Jポップ・アニメ」を期待した観客が感じた違和感がベースにあるようだ。またその背景には、この映画が採用した「Jポップ・アニメ」を期待させるような広告宣伝も、多少良くない方向に影響したのかもしれない。

もしかしたら、映画の望ましいターゲットは、私を含む40~50代の子育て経験層ではないだろうか。逆に、アニメ映画の主戦場であり、『君の名は。』に食い付いた10~20代にはピンと来ないテーマだったのかも知れない(そう考えると山下達郎の音楽とのタイアップはピッタリだ)。

いずれにせよ、ちょっと上の世代が、気楽さと思い入れを感じながら観る、「Jポップ」ではない自分たちの音楽としての映画――『未来のミライ』が切りひらくのは、そういう、新しいアニメ映画の未来なのだと思う。

出演しました↓



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20180708/沢田研二「OLD GUYS ROCK」は「NEW WAYS ROCK」だった。

7月6日、沢田研二の武道館コンサート「OLD GUYS ROCK」は歴史に残るものだったと思う。あまり声高に報じられていないので、そういうことを私が書いておく。

武道館に着いて驚いたのは、舞台がのっぺりと広々としていることだ。何もない黒く広い舞台。そもそもドラムスが無い、キーボードも無い。ギター関連の機材がちょこっとあるだけ。

その種明かしはすぐに分かる。何と今回のツアーは、沢田研二と盟友のギタリスト=柴山和彦の、たった2人だけでまわるのである。

2人ということはアコースティック・セットかと思いきや、柴山和彦は、ほとんどの曲をエレクトリック・ギターで伴奏するのだ。それも強くディストーションのかかった、言わば「エレクトリック・ディストーション・セット」。

世界初ではないか。

タイガース再結成のときも、相当な冒険と思った。かなり久しぶりに人前で演奏するメンバーもいるのに、サポートメンバーが一切いなかったことが。しかし今回のツアーは、それを上回る冒険だと思う。

ギター一本ということは、リズムとコードとメロディを、たった一本で感じさせるよう、弾き方を根本から変えなければならなかったはずだ。そういう計算づくの演奏を、柴山和彦は見事にこなしていた。

沢田研二のボーカルも、ほとんど丸腰のような状態で、逃げ場がないのだから大変だ。初日ということもあって、少々ミスもあったような気がするが、それでも2時間弱、安定的に歌いこなしたのは凄いと思う。2時間弱と、少々短かったが、このストレスのかかる設定で3時間は無理だろう。前提が異なる。

沢田研二は、なぜ、こんな奇妙な形態のコンサートツアーを考えたのだろう。数秒考えて、おそらく正解にたどり着く――「ただ、やりたかったんや」。

思えば、10年前の、東京ドームで80曲歌う「ジュリー祭り」もとんでもなかった。その後もメッセージソングだけを歌うコンサートや、山ほどあるヒット曲をワンコーラスで歌い継ぐコンサートなど、絶えず何かをしでかしている。

今回も単にその延長なのだ。逆に、最近の沢田研二のコンサートで、新しい試みが何も無いことはあったか? 沢田研二と書いて「チャレンジ」と読む。「OLD GUYS ROCK」は「NEW WAYS ROCK」だった――。

セットリストは公開されているが、あえてここでは書かない。印象に残ったのを1曲だけ書いておけば、「エレクトリック・ディストーション・セット」の中で、敢えてアコースティック・セットとして演奏された、タイガース《風は知らない》に、ちょっと泣いた。

あとは宣伝。



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