20161227/2016年『週刊スージー・レコード大賞』の発表。

もうすでに、日曜深夜に放送されたニッポン放送『DJダイノジの深夜の回転体』で発表しましたが、今年の個人的レコード大賞は、宇多田ヒカル《道》です。今年は、この曲が圧倒的だと思いました。

まず目、ならぬ耳を引いたのは、この映像の最後に流れるサビのメロディの異様さです。この執拗な繰り返しと、ドからミの間にすっぽり入る音域の狭さ。おそらく日本のポップス史上、音域最狭のサビではないでしょうか。

そこは歌詞も繰り返しになっていて、「♪It's a lonely It's a lonely It's a lonely It's a lonely フ フ フ フ (road) But I'm not alone」となってます。

このミニマリズムというか、音域狭く繰り返す実験音楽的な音楽性に、まず注目しました。そして何といっても、その音楽の上に乗る歌詞が素晴らしい。

♪私の心の中にあなたがいる
いつ如何なる時も
一人で歩いたつもりの道でも
始まりはあなただった

♪どんなことをして誰といても
この身はあなたと共にある
一人で歩まねばならぬ道でも
あなたの声が聞こえる


ここの「あなた」は噂通り、宇多田ヒカルの母親のことを指しているでしょう。3年まえに自害した元演歌歌手の藤圭子です。

大ブームとなった 「1998年の宇多田ヒカル」から数年、ワタシは彼女の音楽に対して、あまり興味を持てずにいました。歌い方がとても不自然で窮屈そうで、聴いていてつらく感じたからです。特にこの《Can You Keep A Secret?》なんかは、ニワトリの首を絞めたような歌い方になっている

また当時、音楽関係者・事情通の人たちが、「天才」「天才」と、必要以上に彼女を持ち上げたのも気になっていました。音楽を分かっているフリをするために、宇多田ヒカルを持ち上げた人も多かったと推察します。

そして、それと似た現象が、藤圭子のデビュー時にもあったと聞きます。敬愛する輪島祐介さんの『創られた「日本の心」神話』によれば、当時の五木寛之は、藤圭子の音楽について、こう記したそうです。

―――ここにあるのは、〈艶歌〉でも〈援歌〉でもない。正真正銘の〈怨歌〉である。(中略)〈怨歌〉は暗い。聞けばますます暗い沈んだ気分になってくる。だが、私はそれでも、口先だけの〈援歌〉より、この〈怨歌〉の息苦しさが好きなのだ。

このように「インテリ文化人」が、妙に脂っこい深読みして藤圭子を持ち上げ、それが藤圭子のブレイクの大きな要因になっているというのです。

ワタシなど、五木の言い回しの方が「息苦しい」と思うのですが、それはともかく、〈怨歌〉を〈R&B〉に変えると、それはデビュー直後の宇多田の持ち上げられ方とそっくりになります。

また、その「息苦しい」という感覚は、《Can You Keep A Secret?》のときの宇多田のボーカリゼーションにもつながっていく。

変な持ち上げられ方からの脱出。沢木耕太郎『流星ひとつ』のあとがきによれば、藤圭子が「別の生き方をしてみたい」と引退したのも、宇多田が「もっと人間活動をしたい」と音楽活動を休止したのも、同じ28歳のとき。

そして今、33歳の宇多田が、昔よりも「人間」的な歌い方で、等身大の母を見つめなおし、「♪調子に乗ってた時期」のようにではなく「♪生かされてる」感覚で、ポジティブに音楽活動を再開した宇多田―――そんな彼女による、一種のアンセムとして、この歌は響いてきます。

最後に。2005年のYUKI《長い夢》という歌があります。一説には、亡くなった息子のことを歌っていると言われます。それは、この《道》と対称を成します。

亡くなった母親、亡くなった息子。「亡くなる側」ではなく「亡くなられた側」の論理。悲しみをポジティブに乗り得ようとするライフ・アンセム。

YUKI《長い夢》がゼロ年代を代表する音楽となったように、宇多田の《道》も、イチゼロ年代を背負っていく音楽として、永く記憶されるでしょう―――大傑作。

(参考)過去のレコード大賞

1992年:吉川晃司《せつなさを殺せない》
1993年:ザ・ブーム《島唄》
1994年:小沢健二《愛し愛されて生きるのさ》
1995年:Mr. Children《シーソーゲーム~勇敢な恋の歌》
1996年:(該当作品なし)
1997年:カジヒデキ《ラ・ブーム~だってMY BOOM IS ME~》
1998年:ゆず《夏色》
1999年:椎名林檎《翳りゆく部屋》
2000年:慎吾ママ《慎吾ママのおはロック》
2001年:ピチカート・ファイヴ『さえらジャポン』アルバム
2002年:RIP SLYME『TOKYO CLASSIC』アルバム
2003年:クレイジーケンバンド『777』アルバム
2004年:大塚愛《さくらんぼ》
2005年:YUKI《長い夢》
2006年:Def tech 《Power in da Musiq ~Understanding》
2007年:くるり『ワルツを踊れ~Tanz Walzer』アルバム
2008年:木村カエラ《Jasper》
2009年:木村カエラ《Butterfly》
2010年:ベッキー♪#《好きだから》
2011年:桑田佳祐《月光の聖者達~ミスター・ムーンライト》
2012年:木村カエラ《Sun shower》
2013年:大友良英《あまちゃんオープニングテーマ》
2014年:赤い公園《NOW ON AIR》
2015年:星野源『YELLOW DANCER』アルバム



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20161225/2016年「俺映画」「俺ドラマ」「俺野球」の発表!

メリークリスマス。クリスマスの夜は、こんな感じでお願いします。

【宣伝】「聖なる夜はスージー鈴木とともに」:12月25日の21時~歌謡ポップスチャンネル「松本伊代・堀ちえみ・早見優 80年代アイドル女子会スペシャル」にコメンテーター出演、25時30分~ニッポン放送「DJダイノジの深夜の回転体」で90分出ずっぱり・選曲しまくり。ぜひどうぞ。

それでは、「俺シリーズ」の第3弾、映画とドラマと野球のMVP、行きます。次回は恒例の「レコード大賞」です。

★「俺映画」1位:『シング・ストリート 未来へのうた』

映画『シング・ストリート 未来へのうた』@新宿シネマカリテ。一言で言えば「アイルランドのリンダリンダラバーソール」。無論、最大限の褒め言葉。流れる80年代(中盤)洋楽やオリジナル曲が、まったく外れなく素晴らしい。こういう映画につまらない邦題は不要。

20160911/映画『シング・ストリート』評~NOKKOとシャケのラブ・ストーリー映画が観たい。

「俺映画」2位:『この世界の片隅に』

映画『この世界の片隅に』。のんa.k.a.能年玲奈の声に持っていかれる「あまちゃん」第158回。終戦後に韓国国旗が掲げられるリアリティ。野球ファン的には、あの呉の焼け野原で素振りをする広岡達朗を想像。そして20年後のその場所で、ギターを抱える浜田省吾を想像する音楽ファン。

【宣伝】東京スポーツ(大スポ、中京スポ)の水曜(本日)連載「スージー鈴木のヒット曲講座」、今回は、映画『この世界の片隅に』の主題歌を、各方面からの圧力に抵抗し掲載(嘘です)。のん(能年玲奈)いわく「心臓をギュッとつかまれたような」コトリンゴの歌は、フォーク・クルセダーズのカバー。

「俺映画」3位:『シン・ゴジラ』

ようやっと #シン・ゴジラ 。まずは素晴らしい映像とリアリティある脚本に驚く。普通に読み取れば、あからさまに政治的なメッセージを含むが、そのあたりに対する配慮が二重三重に張り巡らされていて実に巧妙。武田砂鉄、小田嶋隆、そしてナンシー関の感想が聞きたくなる映画。

先述した #シン・ゴジラ の政治的配慮について付け加えれば、あの映画、与党にも野党にも喜ばしい、絶妙な作りになっているということ。そのあたりを上手いと見るか、姑息と見るか。私は前者。ちなみにそんな絶妙さでロングセラーとなった映画が「男はつらいよ」だと思う。

【宣伝】東京スポーツ(大スポ、中スポ)の本日発売号掲載「スージー鈴木のヒット曲講座」。今回は、『シン・ゴジラ』と『おおかみこどもの雨と雪』の音楽の素晴らしさと、日本映画のエンディングで内容と無関係に流れるJポップ・タイアップの是非。

★「俺ドラマ」1位:NHK『ちかえもん』

NHK「 #ちかえもん 」。「松尾スズキ演じる近松門左衛門が『大阪に生まれた女』の替え歌を歌い、その下にテロップで『うた:近松門左衛門』と出るドラマ」というだけで観なければいけない理由がたっぷりとある。朝ドラ史に残る傑作、『ちりとてちん』も書いた脚本家・藤本有紀、再覚醒か。

NHK #ちかえもん は見なけりゃ損するドラマ。 #ちりとてちん → #カーネーション → #あまちゃん の流れを途絶えないようにしたいという #NHK の根性がうかがえる。それにしても今クールは豊作。新「テレビの黄金時代」(小林信彦)が来そうだ。

『 #ちかえもん 』最終回、圧巻。2人が越前で鯖を釣っているのを見て、やっと気付いた。『ちかえもん』は、同じく藤本有紀脚本の朝ドラ『 #ちりとてちん 』のアンサーだと(「ち~ん」と題名も似ている)。浪速から越前に向かった徳兵衛とお初の子孫、喜代美が福井から大阪に向かうんだと。

「俺ドラマ」2位:NHK『トットてれび』

NHK #トットてれび 圧倒的スピード感。これぞ、テレヴィジョン!

20160508/NHK『トットてれび』にシビれながら、ネット時代における「サブカル」について考える。

#トットてれび 遅ればせながら先週回。泣く。晩年のやつれた渥美清を再現するメイクの上手さ。また渥美の奥さん役に、いま日本で一二を争う演技力の女優・中村優子を持ってくるセンス。「ザ・ベストテン」を語らずに来週で終われば納得し難い。久米宏役を演じるいとうせいこうが見たかった。

#トットてれび 最終回は大満足。小林信彦フリークとしては、氏の著書を考証にしっかりと使っている感じに共感。続編は―――「アオシマてれび」「ジュリーてれび」「マエタケてれび」「キンチャンてれび」「タモリてれび」「クメてれび」のどれかで。あと「イトイらじお」「ハマムラらじお」。

「俺ドラマ」3位:NTV『ゆとりですがなにか』

NTV『ゆとりですがなにか』は「ザ・安藤サクラ・ショー」。やれ高畑充希だ、やれ二階堂ふみだ、やれ松岡茉優だ、と言っているところに、安藤サクラが土足で乗り込んでくる感じ。ただ、「バブル世代」と言われることに私が感じる強烈な嫌悪を、当の「ゆとり世代」が感じなければ良いのだが。

今夜の『 #ゆとりですがなにか 』は、安藤サクラが、凄い世界、ピリオドの向こう側にたどり着いた。50mほど差を付けられているが、それを追うのが『 #重版出来 』の黒木華。この2人のおかげでこのクールは大収穫。対して某朝ドラは、高畑充希を起用しておきながら何をしているのだろう。

【宣伝】東京スポーツ(大スポ、中スポ)の本日発売号掲載「スージー鈴木のヒット曲講座」。今回は、感覚ピエロによる『ゆとりですがなにか』の主題歌の、クドカン脚本とのハマリ具合がSADS『忘却の空』以来という話と、安藤サクラが凄すぎる件。

#ゆとりですがなにか 最終回。先週よりストーリーが散らかりすぎと思ったが、それは私が安藤サクラに見入ってボーっとしていたからだと判明。安藤サクラの披露宴でのスピーチは、TBS「輝け隣太郎」(95年)の樹木希林の披露宴スピーチに並ぶ、という見方で見た人は日本で数名と思うが。

★「俺野球」パ・リーグMVP:大谷翔平(北海道日本ハムファイターズ)

・大谷翔平/俺的名シーン

★「俺野球」パ・リーグMVP:筒香嘉智(横浜DeNAベイスターズ)

・筒香嘉智/俺的名シーン



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20161218/ベンチャーズ→寺内タケシ→ブライアン・メイと流れた「民謡風ギターの偏西風」。

「俺シリーズ」はいったんお休み。先日の「石黒謙吾フェス」(ご来場感謝)で、ゲストの放送作家=チャッピー加藤さんから聞いた、興味深い話を。

(1)クイーンのブライアン・メイは、寺内タケシのファンだったらしい。
(2)寺内タケシには三橋美智也の三味線と競演した《津軽じょんがら節》という音源がある。

(3)ブライアンはそれを聴いていたのではないか。なぜなら《ブライトン・ロック》には、その影響と思わるフレーズがある。

これには驚いた。確かに、《ブライトン・ロック》のこのあたりは、とても民謡的・じょんがら的だ。
⇒「Queen - Brighton Rock (Official Lyric Video)」(頭出し済)

このロック・トリビアに加えて、もう少し俯瞰的な視点を加えると、また色んなことが考えられるのである。

(4)そもそも寺内タケシのソロは、《津軽じょんがら節》だけでなく、だいたいが日本の民謡風に聴こえる。
(5)そういえば、大滝詠一は、ベンチャーズのノーキー・エドワーズのギターのアドリブには「民謡のコブシの感覚がある」と指摘していた(白夜書房『All About Niagara』収録「絶大だったヴェンチャーズの影響力」)。

(6)ということは、ベンチャーズのから影響を受け、その感覚を誇張して、さらに広めたのが寺内タケシではないか。

という諸々をギュッとまとめると、「ベンチャーズ→寺内タケシ→ブライアン・メイ」という、アメリカ→日本→ヨーロッパという、「民謡風ギターの伝播」についての偏西風のような流れがあったということになる。

そして、その偏西風を吹かせた風力エンジンは、グローバル・スタンダードと言える、最も基礎的な音列、「(2・6抜き)5音音階」だと思うのだが。

という、マクロな話に加えて、最後に再度ミクロな話。本件でネット検索をしていて釣り上げた、更なるロックトリビア→「ブライアン・メイは、クイーン加入以前のスマイルというバンドの時代(1969?)から、じょんがらを弾いていた!」
⇒「Smile - Blag」(頭出し済)



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20161210/決定!俺本グランプリ2016

前回に引き続き、「俺」独断のランキングシリーズ。今回は、今年読んだ本の中で、「俺(にとって最高だった)本」=「俺本」のグランプリを決定。以下、結果をツイッターの「まとめサイト」形式で。

■2016年俺本グランプリ優勝:柳澤健『1974年のサマークリスマス~林美雄とパックインミュージックの時代』

柳澤健『1974年のサマークリスマス~林美雄とパックインミュージックの時代』(集英社)届く。裏表紙帯にある久米宏のこの言葉にシビれる。読書前モチベーションがこんなにアガる本は、なかなか無い。



柳澤健『 #1974年のサマークリスマス ~林美雄とパックインミュージックの時代』(集英社)。圧巻。久米宏からユーミン、そして水道橋博士をつなぐ歴史絵巻。長谷川和彦と菅原文太をつないだ、つまり『太陽を盗んだ男』の間接的産みの親も林美雄という事実に驚く。

柳澤健『 #1974年のサマークリスマス ~林美雄とパックインミュージックの時代』(集英社)論続き。我々世代には軽薄なイメージのある久米宏が先日ラジオで唐突に「ジャーナリストは命を賭けなきゃならない」と発言をしたことの背景が分かる本。ラジオ好き必読。

柳澤健『 #1974年のサマークリスマス ~林美雄とパックインミュージックの時代』論、続き。微力ながら盛り上げるためにハッシュタグ導入。「林パック」リスナーが『コバルトアワー』でユーミンに幻滅するさまが興味深い。彼らが当時、地味路線に戻った『紅雀』をどう感じたのか聞いてみたい。

柳澤健『 #1974年のサマークリスマス ~林美雄とパックインミュージックの時代』絡みツイートのラスト。荒井由実『旅立つ秋』という曲を愛おしく思える本。アルバム『ミスリム』について、一万回聴いたA面に対し、『旅立つ秋』が入っている、百回くらいしか聴いていないB面を好きになる本。

【参考】スージー鈴木硬式サイト「柳澤健『1974年のサマークリスマス』評~もしユーミンが《ルージュの伝言》を歌っていなければ」

■ファイナリスト:戸部田誠『1989年のテレビっ子』

「西暦系サブカル本」にハズレなし。さっき手に取って、とんねるずの項をパラパラ見たけれど、すごく面白い→戸部田誠(てれびのスキマ)著 『1989年のテレビっ子』

戸部田誠『1989年のテレビっ子』。ページの紙質が風呂で読んで濡れるとくっつきやすいことを除けば(笑)全面的に素晴らしい本。個人的経験が書かれた最終章がとても良かった。大震災を契機に書く仕事に意識的に向かったところは私と共通。次回作は個人的・主観的な筆致で一冊読みたい。

■ファイナリスト:とみさわ昭仁『無限の本棚』

とみさわ昭仁『無限の本棚』。蒐集馬鹿一代、博覧強記、知の巨人。とにかく、札束の写真をネットにあげる人種がいること、ブックオフの最高標高は富士吉田店であること、「リスは捕って売れ」という本があることの3つは覚えておく。怪著にして快著。

■ファイナリスト:鮫肌文殊『らぶれたあ~オレと中島らもの6945日』

鮫肌文殊『らぶれたあ~オレと中島らもの6945日』 (http://amzn.to/2glLEq9)。この期に及んで今年No.1。ページをめくる手が止まらない。増山実氏の著作同様、関西系放送作家の本は、読みだすと止まらない魔法が入っている(但し、百田某の本は未読)。

■ファイナリスト:長門芳郎『パイドパイパー・デイズ』

先ごろ発売された長門芳郎著『パイドパイパー・デイズ』で見つけた、日本ロック史上、重要なのか重要じゃないのか分からない情報……「山下達郎は、長門芳郎の結婚式で、落語『湯屋番』を披露している!」

■ファイナリスト:木村元彦『すべての笑いはドキュメンタリーである~倉本美津留とテレビの34年』

木村元彦著「すべての笑いはドキュメンタリーである~倉本美津留とテレビの34年」読了。「奇才」の発想法を垣間見る。ダウンタウンの話に頼らない構成がいい。「三宅裕司のワークパラダイス」話に笑う。私はVHSを持っている。今夜観よう。

■ファイナリスト:佐藤剛『上を向いて歩こう』

佐藤剛『上を向いて歩こう』(小学館文庫)読了。力作。シビれたのは、作曲家・中村八大の元々の歌い出しの譜面は、現行の「♪(ウン)・う・え・を」ではなく「♪う・-・え・を」だったという事実。少年・坂本九のロックンロール感覚が加えた冒頭の4分休符(ウン)こそが、この曲を世界に導いた!

■ファイナリスト:川瀬泰雄他『ニッポンの編曲家』

面白すぎて読むのに時間がかかる。大村雅朗の説明コピーが冴えていて、そして哀しい―――「繊細な感性を持ちながらも早世した、ポップス界の至宝」→川瀬泰雄『ニッポンの編曲家』



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20161204/「俺紅白2016」出場者決定!

「俺の理想の紅白」の出場者と曲を考えてみました。合計20人、昔の紅白のように21時からの3時間制。さて、どんな対決になるでしょうか―――

1回戦:◎BABYMETAL vs RADIO FISH
・今年型破りな活躍をした話題の2組。RADIO FISHにはピコ太郎も乱入して盛り上げるも、世界的活躍の貫禄でBABYMETALの勝ち。

2回戦:藤原さくら vs Suchmos◎
・今年前半戦のMVP同志の対決。藤原は《Soup》よりも、こっちの曲で押し出すべきだった。Suchmosは今年最もカッコいい曲。Suchmosに軍配。

3回戦:anderlust vs ゲスの極み乙女。◎
・anderlustは「俺紅白」に大抜擢。《帰り道》は映画『あやしい彼女』の主題歌で、奇妙なコード進行が心地いい野心作。ただしインパクトでゲスの極み乙女。が勝利。私生活のあれこれによって音楽まで否定することのほうがゲス。

4回戦:◎AKB48 vs UNISON SQUARE GARDEN
・AKB48の曲には当たり外れが大きいと思うが、この曲は当たり。America《VENTURA HIGHWAY》の影響が心地いい。UNISON SQUARE GARDENの賑やかな曲も面白いが、AKB48に軍配。

5回戦:木村カエラ vs 星野源◎
・木村カエラ《向日葵》は良曲もやや地味だったか。《Sun Shower》の水準を超えるのは難しい。逆に星野源は今年も安定。「みくり」も出て来て、例のダンスも披露しつつ、白組勝利。

※ここまで2vs3で白組優勢。今年のNHKを代表する2大ドラマの応援合戦を経て、後半戦へ。

6回戦:山本彩 vs 斉藤和義◎
・生音対決。山本彩のギター志向/弾き語り志向は、このご時世、とても貴重。また《やさしくなりたい》で紅白に出場したときの斉藤和義の生演奏も素晴らしかった。貫禄で斉藤和義の勝ち。

7回戦:◎新妻聖子 vs ゴールデンボンバー
・飛び道具対決。毎年紅白を熱心に盛りあげるゴールデンボンバーには頭が下がるが、いま日本でもっとも歌が上手い新妻聖子が押し出しで勝利。

8回戦:コトリンゴ vs RADWIMPS◎
・映画音楽対決。今年のMVPであるRADWIMPSの《前前前世》~《なんでもないや》のメドレーが、『この世界の片隅に』の主題歌に勝利。RADWIMPSはボーカリストの声もさることながら、ギタリストが面白い。次世代の布袋寅泰。

9回戦:◎島津亜矢 vs 桐谷健太
・昨年の紅白のMVPにして、日本を代表するディーバ=島津亜矢が、ホイットニー・ヒューストンの名曲を熱唱。桐谷健太は、《海の声》よりも、こちらの曲の方がクリエイティブだと思ったが、貫禄が違った。

10回戦:◎宇多田ヒカル vs 桑田佳祐
・いよいよトリ対決。宇多田ヒカル《道》は、個性的なメロディと深みのある歌詞で、今年を代表する曲。桑田佳祐の最新シングルも悪くないが、時代を背負っているという意味で宇多田ヒカルの勝利。

というわけで、結果は紅白史上初の同点=紅白引き分けで終了。大友良英スペシャル・ビッグバンドによるスウィング風の《蛍の光》で新年へ―――



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20161128/RADWIMPS《トアルハルノヒ》の肯定感とhyukohとM-1予想。

11月27日の倉本美津留さんとの「ビートルズ発想塾」イベントに来ていただいた方、本当にありがとうございました。おかげさまで満席になり、熱気の中で進めることが出来ました。

感じたのはこういうことでした。

【感謝】倉本美津留さんとの「ビートルズ発想法」イベント、おかげさまで立ち見まで出る盛況となりました。懐古的な形で取り上げられることが多い彼らですが、倉本さんの話を聞き、その本質がもっと語られるべきだと痛感しました。来ていただいた皆様、本当にありがとうございました。

さて、めげずに「2016年のビートルズ」を探す日々に戻るのですが、NHKの『SONGS』で観た、RADWIMPSの《トアルハルノヒ》という曲が素晴らしかったので、こちらでご報告したいと思います。

ぽっと出のように思われがちなRADWIMPSですが、結成は2001年で、なかなかのキャリアを持つ。この《トアルハルノヒ》は、初期からのファンと巡り合った喜びを歌った曲。何といっても歌詞が良い。

宛名もなしに書きなぐった夢を
恥じらいもなく晒してきた本音を
当たり散らした無様な醜態を
こぼれ落ちたまま走らせた希望を

このあたりは、不遇な時代もあっただろう、これまでの自らの表現を顧みたものだと思う。そして、ブレイクをした今、初期からのファンがやってくる。

書きなぐり続けて 10余年の日々が
そしてその少女は 目の前に現れた
その手、瞳、胸に
手紙の返事を 宿して現れたんだ

そういうことがあって、自分たちはこう思う。

まともに話さえ できなかったこの僕が
そんなにも君と 想いを交しあっていた
ロックバンドなんてもんを やってきて本当に良かった

この「ロックバンドなんてもんを やってきて本当に良かった」という歌詞にシビれたのです。やれ「ロックは死んだ」「ロックは終わった」など、シニカルに言うことがカッコいいとされる日本ロック業界で、ここまで肯定的な歌詞があったでしょうか。

これはもしかしたら、レッド・ツェッペリン《天国への階段》の最後の歌詞、「♪To Be A Rock, Not To Roll」(ロックへの意志はブレない、みたいな意?)に匹敵するのではないかとまで思ってしまう。

そしてそれは、この「硬式サイト」で「宛名もなしに書きなぐった夢を」「書きなぐり続けて 17年の日々が」過ぎて50歳になった(一昨日に!)、自分へのメッセージにも聴こえてくる。

映画『君の名は。』の関連曲に加えて、この曲でRADWIMPSは、今年のMVPにノミネートされました。

あと注目は、韓国のバンド、hyukohです。CBCラジオ・大谷ノブ彦『キスで殺してくれないか』で聴いてハマりました。さしずめ「韓国のSuchimos」という感じです。

最後に、12/4(日)に迫ったM-1グランプリ予想。「さら青」ファンとしての希望含み予想だが、下ネタ禁止で行けば可能性あり。よしもと色が強い大会に一矢報いるか。

1位:★さらば青春の光
2位:銀シャリ
3位:アキナ
4位:スーパーマラドーナ
5位:(敗者復活=予想1位:とろサーモン、2位:学天則、3位:三四郎)
6位:ハライチ
7位:相席スタート
8位:カミナリ
9位:スリムクラブ



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20161120/出版不況に求められるのは、人を「不良(わる)く」させる本だ。

世の中的には、まったくどうでもいいことかも知れないが、ワタシ的には、深く感じ入ったエピソードというものがある。これなど、その典型。

水道橋博士『はかせのはなし』(カドカワ)を早速。「ビートたけしは、小林信彦(中原弓彦)著『日本の喜劇人』がキッカケで、浅草に向かって芸人になった」という、ビックリするような事実を知る。読書は知を知るためではなく、無知を知るためにある。あぁ驚いた。

その部分のみ書き起こすと、こういうことである。

ぼくはかつて、たけしさんに「芸人になってから、中原弓彦(小林信彦)の『日本の喜劇人』は読まれたのですか?」と聞いたことがあります。

この本の最初のバージョンは、新宿でくすぶっていた北野武が大学をやめて浅草に行くのと、ほぼ同じ時期に出版されています。

「あのよォ、それは逆で『日本の喜劇人』を読んだから、俺は決心して浅草に行ったんだよ」と、たけしさんは教えてくれました。

これをざっくり言えば、ビートたけしを生み出したのは、たった一冊の本、ワタシ自身も何度も何度も読んだ、小林信彦『日本の喜劇人』だということになる。これには驚いた。

さて、サザンオールスターズに《吉田拓郎の唄》という、個人的には好き(しかし世の中的な評価はイマイチなよう)な曲があるのだが、その中の好きなフレーズ―――「♪お前の描いた詩(うた)は 俺を不良(わる)くさせた」。

全体的に一見、吉田拓郎のことを皮肉っているような曲なのだが、それは真逆で、桑田佳祐がラジオで語った、こういう、床の間に飾りたくなる言葉を知った上で捉えなければ―――「吉田拓郎を聴いて、音楽で金を稼ぐって、すげぇいいなと思ったんです」。

それはともかく、「俺を不良く(わるく)させる」ことが、読書の本当の、本質的な価値なんだなぁと、改めて感じ入った次第なのだ。

出版不況ということで、街の本屋さんがどんどん閉店しているようだ。そして、生き残っている本屋に行ってみると、目につくのは、大きなビジネス書の棚である。

会社員として出世する。ベンチャーとして金を稼ぐ。みんなに好かれるいい上司になる―――ための本。扇情的なタイトルで、字や空白が大きく、1時間で読めそうな本たち。

ワタシが思うのは、そういう本を並べているからダメなんじゃないのかと。鬱屈している若者を「不良く(わるく)させる」ような本を並べないとダメなのではないかと。大げさに言えば、それは本屋の未来を超えて、日本の未来に向けて。

あと、最近なんだか「サブカル」論がかまびすしいようだが、目指すべきは、「メインカルチャー」に閉じた付随物=「サブ・カルチャー」なんかじゃなく、「メイン」とぜんぜん異なる、もう1つの生き方に誘う=人を不良(わる)くさせる、「オルタナティブ・カルチャー」で無ければと、思った次第。

だから本屋は、もの欲しげなビジネスマンではなく、新宿のフーテンだった北野武少年のような、ヤバい目をした若者がたむろする場所にならないと―――

鬱屈している若者よ、まずは、これを読むことから!



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20161113/『べっぴんさん』と『カーネーション』と『そこまで言って委員会』。

NHK『べっぴんさん』に、少しずつハマってきている。これまでの大阪朝ドラに比べて、決定的に地味なのだが、その地味で上品で、背丈の大きくない女の子が、しずしずと演技をしている感じが心地よくなってきたのだ。

ご存知のように(?)、ワタシは東大阪市の出身で、ふるさと関西には強烈な愛着がある。そんなワタシの朝ドラベスト3は「あま・ちり・カーネ」=『あまちゃん』に、大阪制作の『ちりとてちん』と『カーネーション』。

中でも最高傑作は『カーネーション』と断言する、のだが、『カーネーション』、東大阪の実家筋・幼なじみ筋では、評判がよろしくないのだ。

どうも、尾野真千子(小原糸子)のギャンギャンする演技が鼻についたみたいだ。関西弁(岸和田弁)でギャンギャンする、過剰で「えげつない」演技に抵抗感を感じた模様なのだ。

実はワタシ、その気持ちは少し分かるのである。とはいえ、『カーネーション』は、脚本のクオリティが圧倒的なので、ワタシ的1位のポジションは揺るがないのだが。

気持ちが分かるというのは、大阪制作朝ドラにおける関西人ヒロインが、必要以上にエネルギッシュでポジティブに描かれていると思うからだ。もう少しニュートラルでもいいのではと感じ始めているのだ。

さて、突然、話を変えれば、例の沖縄における大阪府警機動隊員の「土人」発言について。

大阪府警の人間が、ああいう発言をすることの背景には、読売テレビ『そこまで言って委員会』という番組の影響がありそうだ、という趣旨の記事を雑誌『週刊金曜日』で読んだのだ。

『そこまで言って委員会』。どうも、こういうことなっているらしい(関東ではネットしていないので詳しいところが分からない)→ 「松井知事『土人』発言擁護と同根!『そこまで言って委員会』など大阪のテレビの聞くに堪えない沖縄ヘイト」

「ヘイト」=えげつない発言をすればするほど、支持が高まっていく構造。そういう空気が、日本だけでなく、トランプ氏の当選を見れば、世界的に広がってきている気がする。

で、今強く危惧することは、日本において関西地区、特に大阪が、そんなムーブメントの震源地の1つになっているのではないかということだ。

書きたいことは、「居丈高な大阪のオッサンだけに大阪文化を代表させてはいけない」で書いたことと同じ。大切なことだと思うから何回も言う。故やしきたかじんや、百田尚樹、橋下徹、辛坊治郎に代表される、えげつない関西への違和感である。

そしてさらに言えば、そんないびつな一面だけが拡大していくのではなく、やわらかくて、温和な、(おそらくそれは)本来の関西文化への復権を―――ということだ。

次回の朝ドラは、吉本興業の歴史を追った『わろてんか』だという。またちょっと、ギャンギャンする演技に戻りそうだ。

『カーネーション』のいちばん好きなセリフ。小原糸子「生き延びや。おばちゃんら、頑張ってもっともっとええ世の中にしちゃるさかい、生き延びるんやで」。

※追記:引き続き、参加者募集中です。よろしくお願いします!



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20161106/倉本美津留さんとのイベント告知と「あなたが選ぶ1984年の歌謡曲ベスト3」中間発表。

まず最初に告知です。あの倉本美津留さんとビートルズを語るというイベント=「発想偉人から発想法を学ぶ。倉本美津留とスージー鈴木のビートルズ発想法」が開催されます。限定100名、ぜひお越しくださいませ。

倉本美津留さんについては、もう説明は不要でしょうが、「ビートルズ発想法」について書かれた『ビートル頭(ズ)』という著書があり、あと最近では、氏の奇才・鬼才ぶりを克明に追った、木村元彦著『すべての笑いはドキュメンタリーである~倉本美津留とテレビの34年』という快作があります。

あと、ワタシは今日買う予定ですが、BRUTUSの漫才特集にも関わっておられるようです。こちらも楽しみ。どんなイベントになるか、全く分かりませんが、ぜひどうぞ。

さて、『水道橋博士のメルマ旬報』で連載していました「1984年の歌謡曲」が無事、全48曲の批評が終了しました。それを記念しまして、「あなたが選ぶ『1984年の歌謡曲』ベスト3」という企画を展開中です。ツイート(ハッシュタグ「#1984年の歌謡曲」)orメールにてご応募ください。

・応募要領及び「1984年の歌謡曲」楽曲リストは→コチラ
・ツイート応募途中経過は→ コチラ

で、先ほど、昨日(11/5)までのツイート応募を集計しました。1位=3ポイント、2位=2ポイント、3位=1ポイントとして積算。それでは、暫定ベストテンを中間発表いたします。

1.大沢誉志幸『そして僕は途方に暮れる』(28ポイント)

2.サザンオールスターズ『ミス・ブランニュー・ディ』(24)

3.薬師丸ひろ子『Woman~Wの悲劇より』(14)

4.アルフィー『星空のディスタンス』(13)

5.安全地帯『ワインレッドの心』(12)

5.吉川晃司『ラ・ヴィアンローズ』(12)

5.小林麻美『雨音はショパンの調べ』(12)

8.オフコース『君が、嘘を、ついた』(9)

9.中原めいこ『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。』(6)

9.松田聖子『ハートのイアリング』(6)

9.佐野元春『TONIGHT』(6)

(次点)12.吉川晃司『サヨナラは八月のララバイ』(5)
(次点)12.杏里『悲しみが止まらない』(5)
(次点)12.石川優子&チャゲ『ふたりの愛ランド』(5)

大沢誉志幸強し。続くサザンが、3位以下を大きく引き離しています。3位から5位は混戦で(予想外のアルフィー、小林麻美の躍進)、逆に、この年チャートを席巻したチェッカーズが全く出遅れているという大波乱。

ツイート1つひとつを読んでいくと、応募していただいた皆さんの84年の生き方が偲ばれて、胸がキューンとなります。そんなノスタルジー半分、ノスタルジーに流されない批評マインド半分で、今更あえて、32年前のヒット曲を考察したいと思います。

なぜなら、ノスタルジーと批評マインドで、自分たちが生きてきた時代のオールディーズを云々できるのは若者にはない、中年以上の特権なのですから―――11月18日(金)〆切です。ぜひご応募ください。



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20161029/日本シリーズ第6戦を前に、大谷翔平を心配する。

日本シリーズが盛り上がっている。前回記事での予想通りに、平成生まれが躍動する楽しいシリーズなっている。そして視聴率も堅調のようだ。

しかし、今夜の第6戦のファイターズ先発が大谷翔平ではないことに驚いた。そして、第1戦での制球の甘さや、札幌での3試合での、どこかぎこちない打撃フォームなどを見て、余計なことを考えてしまうのである。

それは、今は昔のように感じる、パ・リーグCS第5戦。突如抑えとして登板したことの影響ではないかということである。

このゲーム、抑えに大谷翔平が登板した舞台裏について、栗山監督発言。 「あいつが珍しくこっちをずーっと見ていた。“ボク、行きますよ!”という目でオレを見ていた。初めてなんじゃない。それだけ勝ちたかったんだろうね。本人の『やりたい』という気持ちを止めてしまうことが一番のリスクだと思った。このゲームは行くべきだと思った」

多少個人的好みも入るが、ワタシはこういう采配を好きではない。こういう采配とは、監督が自分の意志で決めるのではなく、選手の意志前提で采配することだ。さらに突き詰めて言えば、采配そのものよりも、「選手が出たいというから出した」という、よく考えれば、一種の責任放棄のような発言が苦手なのだ。

3年前の日本シリーズ(イーグルス対ジャイアンツ)の最終戦、抑えに田中将大を登板させた理由についての、イーグルス監督星野仙一のコメント「もう、最高です! 考えられない継投だったけど、どうしたって田中が『行く!』と言うので。彼がいたからこそ、日本シリーズに出れたのだから、最後はアイツがふさわしいだろう、と託した」への違和感と同様である(詳細はリンクを辿っていただきたい)。

まぁ、この星野采配に比べて、今年のパ・リーグCS第5戦については、抑え不在という台所事情もあったので、ある程度は仕方がない部分もあろう。ただしそれでも、「“ボク、行きますよ!”という目」で登板を采配していいものかどうか。

事実、栗山監督はその試合後に「二度とこんなことは起きない」と発言しているし、吉井投手コーチも「送り出した側としては、故障が怖い。無事に(ベンチに)帰ってきてほしいと思った。これを続けたら壊れるよ」と話している。当然だろう。

ともあれ、この試合、とにもかくにも大谷翔平は登板し、165Km/hというとんでもない球速を出して、見事に抑えたのだ。そして、世間は「クローザー大谷翔平」と「165Km/h」を手放し大歓迎・大喝采(という感じだった)したわけだが、本当に大丈夫だったのだろうか。

今夜の先発回避が、このときの登板の影響ではないことを願う。ワタシの心配が杞憂であることを心から祈っている。さらには、例えば今夜、8回までリードしたとして、9回裏、大谷が抑えとして登板、意気に感じた大谷が、また球速165Km/hを連発して、その後、身体にダメージを受けないことを願う。

大谷翔平は、それほどの心配をするべき球界の宝だと思うし、球速165Km/hとは、それほどの心配をするべきスピードだとも思う。そして、ついつい忘れがちな事実として―――大谷翔平だって人間なのだ。



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20161023/平成生まれが躍動する日本シリーズは、新しい球界への扉だ。

日本シリーズが始まった。今年の日本シリーズは、(個人的には2011年以来の)名シリーズになる気がする。始まる前に思ったことは、こんなことだった。

日本シリーズの予想は日ハムの4勝2敗。ポイントは中田翔、田中広輔ですら平成元年生まれ。彼らより下の平成生まれが躍動する若いシリーズだといいこと。球界再編問題以前の巨人一辺倒の球界を知らない子供たち。結果はどうあれ、若いって素晴らしいという読後感になると思う。

上手いこと書いている気になりながら、こういうのは書きながら不安になる。本当に若いのかと。調べてみた。出典はスポナビ。


訂正:田中広輔は07年ではなく13年ドラフト入団。

やはり。本当に若かった。平均年齢で語るのは、あまり意味がない気がするが、「27歳以下」の数で見るのは興味深いと思う。ホークスやジャイアンツに比べて、ファイターズとカープは、「27歳以下」が圧倒的に多い。主力はほとんど「27歳以下」だ。

ここで「27歳以下」の意味について考える。まずはツイートしたように「平成生まれ」であるということ。さらに言えば、「逆指名」(希望枠、自由枠)制度終了後に入団している人たちだ。

画像にも付したように、中田翔と田中広輔は2007年のドラフトで入団。この年のドラフトは、逆指名制度が撤廃されて初めてのドラフト。つまり、平成生まれは逆指名と無関係に入団している。

その意味とは何か。直接的にはこのようなものだろう。
・「12球団どこでもOK」のメンタリティで入団している
・申し合わせを超えた法外な契約金(裏金)などと無関係

加えて、球界再編以前の象徴である「逆指名」の終了後に入団したということは、以下のような空気とも無関係ということになる。
・巨人一辺倒だった野球界
・セ・リーグの後塵を拝していたパ・リーグ
・一部球団が、逆指名やFAで選手をかき集める

要するに、平成生まれの選手たちとは、巨人を頂点とした「昭和」の球界ヒエラルキーから、自由な選手たちと解釈できるのである。

カープ対ファイターズと言えば、ひと昔なら、指折りの地味な組み合わせだったであろう。地上波の視聴率が懸念されたであろう。しかし、今やそんなことはない。むしろ、いろいろと話題の多い、注目の組み合わせになっている。

球界再編問題から12年。干支が一周回って、正しい新陳代謝が行われてきたと信じる。今年の日本シリーズは、名実ともに「昭和」の球界が終わり、「平成」が始まったシリーズとして記憶されるのではないか。

―――「若いって素晴らしい!」



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20161016/Radikoのタイムフリー機能は、ラジオ業界における革命である。

ワタシたちは今、ラジオ界の「革命」の現場に居合わせようとしている。これ、大げさではない。少なくとも、「ワイドFM」や「AMのステレオ化」、そして「Radikoの登場」を超えて、刺激的な事柄だと思う。

Radikoの「タイムフリー聴取機能」の実証実験開始。

簡単に言えば、1週間以内であれば、過去のすべての番組(例外あり=下記)がストリーミングで聴けるのである。

つまり、この段階で初めて、(一週間以上、保存しないのであれば)ラジオの録音(エアチェック)という面倒くさい行動から解放されたのである(画像は、我が家に未だに残るエアチェック・テープたち)

「革命」以前の「暴動」レベルの話として、「エリアフリー」機能が導入されている。プレミアム会員登録(月額350円)をすれば、全国のラジオ局が聴けるというものだ。つまり「タイムフリー」と「エリアフリー」をかけ合わせれば、過去の×全国のラジオ番組が聴けるのである。

この機能を試してみて思ったのは、こういうことだ。

過去1週間以内に放送されたラジオ番組が聴けるという、Radikoの「タイムフリー」機能は、ラジオ史に残る革命的事象だと思う。ひっくり返るほど素晴らしい。1978年、MBS「ヤングタウン」水曜日(原田伸郎)でハガキが読まれたのを聞き逃して泣いた、40年前の自分にプレゼントしたい。

さらには、こういうことも思う。

過去1週間以内に放送されたラジオ番組が聴けるという、Radikoの「タイムフリー」機能体験2日目。広告業界的にけっこう重要なこととして、これ、テレビと違い、CMも飛ばさずに聞いてしまうことがある。

ラジオなので画面がない。そうすると、CMの分だけ早送りすることがても難しく、結果、CMも含めて聴いてしまうと思うのだ。つまり、Radikoの「タイムフリー」は、ラジオの広告効果を上げる。

さて、実験後の正式導入に向けて、言っておきたいことがある。1つは「聴取可能時間」を撤廃せよということだ。以下、ラジコ公式より。

聴取可能時間(3時間)とは、あるひとつの番組を選んで、その番組を再生した段階から、3時間が経過するまでの間、聴取することができるということです。例えば、12時に再生ボタンを押した場合、その番組は15時まで聴くことができます。

個人的に、アーカイブ期間は1週間で十分だと思う。ただし、3時間の聴取可能時間は、いかにも不自由である。サラリーマンが、行きの電車で聴いて、残りを帰りの電車で聴くということが出来ないだろう。聴取可能時間は撤廃すべきだと思う。

次に「シェア」の概念は不要じゃないかということだ。同じく公式より。

シェア(ボタン)はどのような機能ですか?:タイムフリー聴取機能の一つで、気に入った番組を、SNSやメールでお知り合いに教えてあげることのできる機能です。

ご苦労さんなことに、番組だけでなく、任意の時間から(=頭出し)シェアできる機能。個人的な感覚として断言すれば、この機能は流行らないと思う。動画ではない音声の拡散は、普及しないのではないか。

「タイムフリー」について、聴取可能番組を過去1週間に絞り、また聴取可能時間を3時間に区切るということは、要するに著作権保護の観点からだと思う。だとすれば、「シェア」のような、著作権をないがしろにする方向の訴求などやめて、むしろ聴取可能時間をフリーにすればいいと思う。

ご苦労さんと言えば、こういう話も。

タイムフリーでは聴取できない番組がありますか?:特定のタレント出演番組やスポーツ中継など一部聴取できない番組がありますのでご了承ください。

※聴取できない番組に関しましては、「配信を停止しております」等のアナウンスが流れております。

ラジオ番組は数多くのコンテンツで構成されており、各番組出演者やコンテンツフォルダーに許諾をいただけない場合などは、タイムフリー聴取では配信することができません。


本当にご苦労さんなことだ。

というわけでワタシは、動作が不安定な某ラジコ録音ソフトの使用を止めて、以下の番組を「タイムフリー」で聴かせていただく。また何か思うところあれば、レポートします。

ラジオ日本
・『全米トップ40 THE 80'S』
・『山本さゆりのミュージックパーク』
・『クリス松村のいい音楽あります』

ニッポン放送
・『DJダイノジ深夜の回転体』

TOKYO FM
・『山下達郎のサンデー・ソングブック』
・『桑田佳祐のやさしい夜遊び』

FMヨコハマ
・『たまらなく、AOR』

ラジオ大阪
・『TOP POP MUSIC』

朝日放送
・『小林大作のメモリーズ・オブ・ユー』

KBS京都
・『亀渕昭信のお宝POPS』



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20161010/ファイターズの強さを支えるコトバの力について。

マリーンズ、今シーズン終了。CS1stステージは見事な完敗だったので、悔しさはあまりない(昨年のファイナルステージ同様)。バ・リーグはもう、ホークスとファイターズのリーグになりつつある。

ホークスが強くなった理由は、なんとなくわかる。逆指名も活発だったし、FA・トレード・助っ人獲得戦線にも果敢に参加、そして育成枠も徹底活用、3軍まで作って、ファーム用の見事な球場まで作ってしまう。

対して、ファイターズはどうか。実は、ファイターズの躍進には、その理由を探っていくと、マリーンズ他、財力に乏しい他球団でも参考にできる部分があると思うのだ。

ざっくり言えば、「コトバの力」。

まずは、 「プロ野球としてあるべき指名をします」(ぜひこのリンク記事を読んでいただきたい) 。2011年のドラフトのときの、小関順二氏の記事である。

ドラフト直前まで、菅野智之(投手・東海大)の1位入札は巨人だけだと予想されていた。巨人・原辰徳監督と菅野が伯父・甥の血縁関係で、そこに割って入れば強い抵抗があることを誰もが容易に想像できたからだ。だが、この衝撃の1位指名は会議前に日本ハムのフロントから匂わされてもいたのだ。「誰を指名するんですか」と彼らに気軽に声をかけると、厳しい表情で「プロ野球としてあるべき指名をします」と言われた。「えっ、どういうこと」と聞くと、同じ言葉を繰り返された。真意がわかったとき、背中を悪寒に似た衝撃が走った。

「プロ野球としてあるべき指名」。このコトバの気高さはどうだろう。ワタシが注目するのは、これほど見事なコトバは、アドリブでは出てこないはずだ。つまり、ファイターズのフロントは、ドラフトの戦略を練る上で、「プロ野球としてあるべき指名」というコトバをスローガンとして動いていたはずなのである。

次に、「大谷翔平君 夢への道しるべ」。今となっては驚くべきことなのだが、2012年のドラフトで大谷翔平は、何と単独指名だった。その背景には、大谷に強いメジャー志向があったからなのだが、それを翻意させるために、裏工作ではなく、「夢への道しるべ」というタイトルの企画書を書いて、プレゼンしたというのだ。

さらに驚くべきこととして、その企画書が今でも公開されている。パワーポイントの使い方もこなれていないが、その分、ファイターズのフロントが、一生懸命、自力で書いた感じが伝わって来て、好感が持てる。その好感が説得力になる(注:下リンク、なぜかスマホではリンクされない模様)

そして、「夢への道しるべ」というタイトルの清廉さ!

最後に紹介したいのはこの記事である→ 【日本ハム】2軍戦で戦える高校生獲りを…スカウト・大渕氏が明かす最強の「手作りハム」

ご存知のようにファイターズは、高校卒で活躍する選手がとても多い。ホークスの財力に対して、育成力で勝負するさまは、一種の階級闘争のようにも見える。この記事で書かれているのは、彼らをどう育成するかというメソッドだ。少し長いが、引用する。

全国各地から鎌ケ谷に集まった高卒選手。一般社会を知らない若者が多ければ多いほど、問題が増えることも想定した。神奈川・光明学園相模原高の野球部監督だった本村幸雄氏が11年1月、教育ディレクターに就任。高い目標に到達するために自らノルマを記した長期目標設定シートや、日々の課題や反省を書き出す日誌、さらには朝の読書時間―。鎌ケ谷の勇翔寮では人間力の育成が行われている。

「強制ではありません。やらせることは簡単。本人がやらないと意味がない。人として成長できれば、野球もうまくなれると思っています」

近年は外部講師を呼び、2軍選手へ講演をしてもらっている。シーズン中に月1度。毎年5人前後の講師は多士済々だ。元陸上五輪選手の為末大氏や習志野駐屯地の幕僚長、日本舞踊の先生と、野球とは関係のない職業ばかりだ。

「野球の世界にどっぷりとつかるのは、どうかと。外の空気を吸ってほしい。大卒と高卒とでは人間の幅が違う。どっちがいい悪いではないけど、人としてのアンテナを増やすこと。人として成長することが成長につながる。プロで活躍するのは全選手のうち3割と言っている。一般社会に出ても恥ずかしくない人材を育てる社会的役割もある」


シビれました。どこにシビれたかというと、長期目標設定シート課題や反省を書き出す日誌、朝の読書時間、野球とは関係のない職業の外部講師の講演―――つまり、育成とはコトバであるという明快な思想である。

コトバの力が野球界には必要だ。それに気づいているのは、今のところ、ファイターズだけのように見える。もうマリーンズも脱落したので、こうなったら、ファイターズのコトバの力を、全国的に示してほしい。そしてコトバの力を持たない球団は、落ちこぼれるのだと証明してほしい。

そうすれば野球界は、一歩前に進む。

参考
20111030/ドラフトにまつわる高潔な言葉たち。
20130202/体罰問題の本質は日本語力の欠如じゃないか。



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20161002/いとうせいこう都知事選立候補説をマジに構想する~いとうせいこうフェス観戦記

「いとうせいこうフェス」の1日目に行った。正直、何組かは、この場に不必要だなと思った出演者もいたが、おしなべて楽しめた。いとうせいこうへの愛が詰まっていて、嬉しかった。

1日目のベスト・パフォーマンスは、アルバム『再建設的』でもベスト音源である、ライムスターの《噂だけの世紀末》。実は、この曲に入る前のMCで、宇多丸氏の重要な発言があった。この《噂だけの世紀末》の歌詞が、現代にも通用するという指摘である。

それは日本はじめての世紀末だった
西暦なんて知らなかったから
日本はじめての世紀末だった
誰もがそれにきづかなかった

1989年のアルバム『MESS/AGE』に入っている曲にして、いとうせいこうの最高傑作。理由もなくアタフタしていた20世紀の世紀末を揶揄するような曲である。そして、次のフレーズのあたりが現代性を帯びている。

噂はすぐにひろがりだした
どんな噂だってもうどうだってよかった
世界破滅のイメージを誰もが欲しがった

言うまでもなく、ネット社会との関連である。噂やデマ、ヘイトが、確証もないままに、恐るべきスピードで広がっていく社会。宇多丸氏は、そのあたりのことを言っていたのではないか。

「いとうせいこうフェス」で、ちょっと物足りなかったのは、いとうせいこうの、そういうポリティカルな部分へのフォーカスが無かった/少なかったことである。理由は分からないでもないが、「自宅闘争」や「湾岸戦争に反対する文学者声明」に感化されたクチとしては、そういうことを言いたくなる。

ワタシが行けなかった2日目に、(我らが)水道橋博士のプレゼンテーションがあって、そこに「いとうせいこうが2020年の都知事選に立候補する(で落選する)」というネタがあったと聞いた。これにワタシは深く感じ入ったのである。そして、マジにそれはアリだと思った。

そういうことを書くと、一般人の側からは「文化人なんかに政治なんて出来るかよ」と来る。そして当の文化人からは「私は表現者だから政治には手を出しません」と来る。

でも、ワタシは、いとうせいこうが―――いや、ここから書くことは、特に東京体育館に集まっていた若い人たちに、しっかりと分かっていただきたい事柄なのですが、―――そういう、政治と文化のつまらない分断を、ぴょんと飛び越えようとし続けてきた人だということを知っている。

還暦のいとうせいこうが立候補して、そして演説で、こういうラップをしてくれれば、少なくともワタシは、そして東京体育館に集った連中は投票すると思う。そして、落選したとしても、日本は少し、いい方向に変わると信じる。

噂はすぐにひろがりだした
どんな噂だってもうどうだってよかった
世界破滅のイメージを誰もが欲しがった

北朝鮮や中国が攻めてくると騒いだ
そのために沖縄には基地が必要とされた
アメリカの戦争を手伝うことが仕組まれた
イスラム教は危険な宗教と言われた

汚染水はアンダーコントロールと演説された
東京にオリンピックが開かれることになった
それでも景気はちっとも回復しないままだった
なのに音楽家は何も気づかず
ただ適当な歌を作ってばかりで

2020年に誰もが思った
こんなことならやっておけた
出口がないと噂して
自分で出口をふさいだことを

噂だけの2010年代末
噂しか残らない2010年代末
噂だけの2010年代末
噂しか残らない2010年代末

「絶対の孤独を」



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