今年のMVPはまちがいなく彼だと思う。

厳然たる事実として、彼が属するチームは終盤で失速し、ペナントをつかみそこねた。だから慣例としてはMVPの座にはふさわしくないのだろうが、個人的にはつよい確信をもって彼にMVPの称号を与えたいと思う。

「美しい」。いいプレーヤーを見ると、そう思う。そのように感じたプレーヤーは何人もいない。いや、冷静に考えれば94年から96年のイチローと、04年の新庄だけだった。そして今年、彼がその仲間に加わった。誤解を怖れずに白状すれば、すこし恋愛に近い感情さえいだいた。

ひとりの若者が、たった一年でここまで進化するのか、美しくなれるのか、という驚き。その躍動感あふれるプレーだけではなく、どちらかといえば華奢なカラダの中に充満していて、針を刺すとパチンという音とともにはじけてしまうような人間力。

2010年、それは人々がソーシャルメディアというおもちゃを手に入れ、自由気ままにつぶやきはじめた年として、人々に記憶されるだろう。2010年、それは彼が属するチームがなんとかポストシーズンにしのびこみ、そしてその前日に、彼こそがMVPなんだぞと、「つぶやき」ではなく誇りを持って大声で叫びたくなった年として、私は記憶するだろう。

さぁ、クライマックスシリーズ。彼、千葉ロッテマリーンズ、背番号7の美しい姿が、まだまだ堪能できるという歓び。

2010年10月8日 スージー鈴木